曽田和弘の ‘INLAND SEA’ は失われた世界に映える

March 05 23:12 2019

INLAND SEA // ROCK SALT RELEASING
「繊細で、辛抱強く、そしてやりがいのある映画です」とカンヌのDirector’s FortnightのプログラマーであるBenjamin Illos。

ロサンゼルスのArena Cineloungeで2019年3月16日・17日の両日、台本やナレーション無しの「観察映画」の手法で知られるドキュメンタリー映画作家・想田和弘監督の最新作「港町」(英語題名Inland Sea、2018年、122分、観察映画第7弾)が上映されます。「港町」は2018年のベルリン国際映画祭でプレミア上映され、是枝裕和監督やポン・ジュノ監督にも絶賛された話題作です。

この上映は、アート系映画配信サイトMUBIや、ニューヨークのSpectacle Theaterでの「想田和弘レトロスペクティブ(回顧上映)」と連動したものです。

Arena Cinelounge(6464 Sunset Blvd. Lobby Level, Los Angeles, CA 90028)での上映は、3月16日(土)午後2時と、3月17日(日)午後2時20分の2回です。詳しくはhttp://arenascreen.com/calendar をご覧ください。また、上映への出席や取材のお問い合わせは: [email protected]までお願いいたします。

Spectacle Theaterでのレトロスペクティブ上映は、3月2日、「港町」の上映でスタート。3月と4月の2ヶ月間にわたって、想田和弘監督の全9作品が上映されます。詳しくは http://www.spectacletheater.com/kazuhiro-soda/ をご覧ください。

MUBI(mubi.com)でのレトロスペクティブは、「港町」が3月4日から、「Peace」(2010年)が3月5日から、「選挙」(2007年)が3月18日から、「選挙2」(2013年)が3月19日から、それぞれ30日間配信されます。また、「精神」(2008年)、「演劇1」(2012年)、「演劇2」(2012年)もこの夏に配信される予定です。

<上映作品紹介>

『港町』(観察映画第7弾、2018年, 122分)
ベルリン国際映画祭正式招待作品

美しく穏やかな内海。小さな海辺の町に漂う、孤独と優しさ。やがて失われてゆくかもしれない、豊かな土地の文化や共同体のかたち。そこで暮らす人々。静かに語られる彼らの言葉は、町そのもののモノローグにも、ある時代のエピローグにも聞こえる。そして、その瞬間は、不意に訪れる……。監督は、イタリア、カナダ、中国などでレトロスペクティブが組まれるなど、国内外で高い評価を受ける映画作家・想田和弘。ベルリン国際映画祭への正式招待が早々と決まった本作は、作品を重ねるごとに進化を続ける「観察映画」の新境地であり、同時に、現代映画のひとつの到達点である。しかし、我々は、この映画体験の美しさと比類のなさとを語る言葉を未だもてずにいる。あなたは、どうか?


『港町』は、静謐な感動をもたらす、息を呑むほど美しいドキュメンタリーです。島が美しい。海が美しい。そして猫も。だけど際立って美しいのは、そこで暮らす人々。穏やかだが衝撃的で、心を揺さぶるあの場面は、ごく自然に映画のなかに歩いて入ってきました。これが、ドキュメンタリー映画の芸術なのです。
ポン・ジュノ監督(『グエムル 漢江の怪物』『母なる証明』)

想田監督自身が名付けた「観察」とは、対象に関与せず、客観的に傍観する、ということとは明らかに違う。そこには、発見しようとする眼と、聴き分けようとする耳と、待とうとする態度が、自覚的に選びとられているからだ。
そのことが、一見偶然起きたかのように見える出来事を、作品内において必然に変えてしまうのである。この変成こそがドキュメンタリーにおける最も優れた「演出」だと、この『港町』を観て改めて気付かされた。
是枝裕和映画監督

『Peace』(観察映画番外編、2010年、75分)

香港国際映画祭・最優秀ドキュメンタリー賞、東京フィルメックス観客賞、ヴィジョン・ドゥ・レエル・ブイエン&シャゴール賞

「平和って何だろう?どうしたらみんなが共存できるの?」 韓国の映画祭から、この「人類永遠の問い」を向けられた想田和弘監督は、岡山で暮らす人々や猫たちの何気ない日常にカメラを向けた。平和と共存へのヒントは、どこか遠くではなく、自分たちの毎日の生活、足元にこそ潜んでいるのではないか。そう、思ったからだ。想田の妻の実家・柏木家に住みついた野良猫グループと、突如現れた「泥棒猫」との確執。91歳で一人暮らしをする橋本至郎と、彼をボランティア同然でケアする柏木夫妻。その夫妻自身にも迫る老い。そして、己の死を見つめる橋本の脳裏に突然蘇った、兵隊としての記憶――。台本無しで回される想田のカメラは、彼らの人生や“ニャン生”に訪れる大切な瞬間に奇跡的に立ち会う。観る者は、戦争と平和、生と死、拒絶と和解、ユーモアと切なさが同居する「生の時間」を体感し、「共に生きる」ことの難しさと可能性に思いを巡らせる。

Peace』は人の心を動かす並外れた力を秘めた静かな映画だ。人々や猫たちの日常生活を追いかけながら、カメラは観客をひとつの発見へと導く。それは、最も根本的な意味での平和というコンセプト――妥協しながら渋々受け入れる共存ではなく、私たちの人間性の中心にあるアイデアとしての平和である。映画はありふれたものを通じて崇高なものに到達した。
ー 香港国際映画祭審査員:カーマ・ヒントン、ルビー・ヤング、藤岡朝子

 

『選挙』(観察映画第1弾、2007年, 120分)
ベルリン国際映画祭正式招待、米国ピーボディ賞受賞 、ベオグラード国際映画祭グランプリ受賞
2005年秋、小泉劇場まっただなか。東京で気ままに切手コイン商を営む「山さん」こと山内和彦(40歳)は、ひょんなことから自民党に白羽の矢を立てられ、市議会議員の補欠選挙に出馬することになった。政治家の秘書経験もない山さんは、いわば政治の素人。しかも選挙区は、ほとんど縁もゆかりもない川崎市宮前区。いわゆる落下傘候補だ。「電柱にもおじぎせよ!」を合い言葉に、小泉首相や自民党大物議員、地元自民党応援団総出の、世にも過酷な「どぶ板選挙」がはじまった。果たして、山さんは勝てるのか?そして、選挙戦を通じて浮き彫りになる「ニッポン民主主義」の本質とは? 

ベルリン映画祭の一大センセーション” 
日本人のメンタリティーについての荘厳なる序説
– Andreas Platthaus
 独「Frankfurter Allgemeine Zeitung」紙

魅惑的な主人公を描いたカリカチュア” 
– Thomas Sotinel
 仏「ルモンド」紙

『精神』(観察映画第2弾、2008年, 135分)
釜山国際映画祭・最優秀ドキュメンタリー賞、ドバイ国際映画祭・最優秀ドキュメンタリー賞、マイアミ国際映画祭審査員賞、香港国際映画祭・優秀ドキュメンタリー賞、ヴィジョン・ドゥ・レエル・宗教を超えた審査員賞、ベルリン国際映画祭正式招待
格差社会、ひきこもり、ニート、ネットカフェ難民、ワーキング・プア、無差別殺人…自殺者数が11年連続で3万人を超える現代日本。閉塞的で孤独感がただようこの国で、誰もが「生きにくさ」を感じたことがあるのではないだろうか。『精神』は、精神科にカメラを入れ、その世界をつぶさに観察。「正気」と「狂気」の境界線を問い直し、現代人の精神のありように迫った。同時に、心に負った深い傷はどうしたら癒されるのか、正面から問いかける。

何ひとつ押しつけてはいないのに、強烈にドラマティックで忘れ難いこれぞ想田流「観察映画」の真骨頂!
──
 宇多丸(Rhymester・ラッパー)

偉大な作品。見事な映画。しかし、こんなに辛く、悲痛な思いにさせるものは観たことがない。泣きたくなった。そして、泣いた。
──
 デービッド・B・カレン(脚本家『スタートレック』TM

『選挙2』(観察映画第5弾、2013年, 149分)
シネマ・デゥ・レエル映画祭、MoMAドキュメンタリー・フォートナイトなど正式招待
舞台は、2011年4月の川崎市議会選挙。震災で実施が危ぶまれた、あの統一地方選挙だ。映画『選挙』(07年)では自民党の落下傘候補だった「山さん」こと山内和彦が、完全無所属で出馬した。スローガンは「脱原発」。自粛ムードと原発「安全」報道の中、候補者たちは原発問題を積極的に取り上げようとしない。小さな息子のいる山さんはその状況に怒りを感じ、急遽、立候補を決意したのだ。かつて小泉自民党の組織力と徹底的なドブ板戦で初当選した山さん。しかし、今度は違う。組織なし、カネなし、看板なし。準備もなし。選挙カーや事務所を使わず、タスキや握手も封印する豹変ぶりだ。ないないづくしの山さんに、果たして勝ち目は?

山さん、ストライクス・バック!!!
いまだかつて、こんな「政治ドキュメンタリー」が、そしてこんな「反原発映画」があっただろうか?と同時に、これは一種の「活劇映画」でもある。
このヒーローならざるヒーローの、破天荒で孤独で悲喜こもごもの戦いを、われわれ観客は固唾を呑んで見守ることになる。
ー 佐々木敦(批評家)


<想田和弘 そうだ かずひろ>

1970年栃木県足利市生まれ。東京大学文学部卒。スクール・オブ・ビジュアル・アーツ卒。93年からニューヨーク在住。映画作家。台本やナレーション、BGM等を排した、自ら「観察映画」と呼ぶドキュメンタリーの方法を提唱・実践。
監督作品に『選挙』(07)、『精神』(08)、『Peace』(10)、『演劇1』(12)、『演劇2』(12)、『選挙2』(13)、『牡蠣工場』(15)、『港町』(18)があり、国際映画祭などでの受賞多数。著書に「精神病とモザイク」(中央法規出版)、「なぜ僕はドキュメンタリーを撮るのか」(講談社現代新書)、「演劇VS映画」(岩波書店)、「日本人は民主主義を捨てたがっているのか?」(岩波ブックレット)、「熱狂なきファシズム」(河出書房新社)、「カメラを持て、町へ出よう」(集英社インターナショナル)、「観察する男」(ミシマ社)など。 本作『ザ・ビッグハウス』制作の舞台裏を記録した単行本「THE BIG HOUSE アメリカを撮る」(岩波書店)が2018年5月30日に刊行。

想田和弘「観察映画の十戒」
(1)被写体や題材に関するリサーチは行わない。

(2)被写体との打ち合わせは、原則行わない。

(3)台本は書かない。

(4)カメラは原則自分で回し、録音も自分で行う。

(5)カメラはなるべく長時間、あらゆる場面で回す。

(6)撮影は、「広く浅く」ではなく、「狭く深く」を心がける。

(7)編集作業でも、予めテーマを設定しない。​

(8)ナレーション、説明テロップ、音楽を原則として使わない。 

(9)カットは長めに編集し、余白を残す。

(10)制作費は基本的に自社で出す。

公式サイト https://www.kazuhirosoda.com/

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